Jun 28, 2014

カンヌ映画祭の話題作 映画「ヴィオレッタ」:about the movie "violetta"(my little princess)



どうしても観たいと思っていたけれど、結局 観るのがギリギリになってしまった映画「ヴィオレッタ」。”私はママのものじゃない”強烈なキャッチと少女の目線が印象的なポスター。ストーリーは売れない画家ハンナ=写真家イリナ・イオネスコが、実の娘ヴィオレッタ(エヴァ・イオネスコ)をモデルにヌード写真を撮ったという実話。34年という時を経て当時モデルをしていたエヴァ・イオネスコ自身が監督となって映画化したという 決して明るいとは言えない映画だ。









売れない画家 母ハンナ[女優 イザベル・ユペール]、娘ヴィオレッタ[女優アナマリア・バルトロメイ]、ヴィオレッタと暮らす曾祖母は芸術を否定的に捉える女性。そして母ハンナを写真家に導く画家エルンスト[俳優ドニ・ラバン]。エルンストが与えたカメラで娘ヴィオレッタをモデルに、彼女が絵画モチーフとして集めていたアトリエの骸骨、布、壊れた人形、十字架等を使って 独特の世界が出来上がっていく。実物の写真も 作中に登場する再現された撮影風景や写真も 母ハンナの強烈な人生経験から来る美観がある。映画の方がちょっと愛らしいかな。実際の写真はwebでしか見ていないけれど、母の言いなりで撮られる娘の母を見つめる静かな目線と 母の強烈なロリータや女性ということに対する憎しみに近い感情が露になっているように感じた。
母と娘の撮影が始まり、行動を共にするようになってすぐに ヴィオレッタが問う「ママの恋人なの?」。母を導く画家エルンストとの関係性の違和感。「ママは肉体恐怖症で人間の人体が怖いの」という答えが 母ハンナ=イリナ・イオネスコの写真の描き方の奇妙さを物語っている。ストーリー半ば、そして終焉でわかるヴィオレッタが近親相姦によって生まれた人間であるという事実。これがイリナ・イオネスコの写真の全てなのではないだろうか。
女性のみで構成された家庭の奇妙な違和感も、母ハンナが愛すべき娘ヴィオレッタに対する行為が異常性に満ちていることも、そして そこから奇跡的に完成された「フレンチロリータ」と言っては軽く感じてしまう女性像の根幹に流れることも。ストーリーと共に見えてくる芸術の生まれる過程とその実態。愛と性に対する母ハンナの特別な感情が作り上げた世界 と見ると彼女の写真をみる目も変わると思う。
(↓ Irina Ionesco Photography より http://iionescophoto.tumblr.com )







と、ストーリーを追う一方で 母ハンナのスタイリング、ヴィオレッタの子供と女を彷徨う独特な空気を作るスタイリングがかっこいいなぁなんて呑気に観察するくらいのペースの映画でもあります。キャサリン・ババというなんとも個性的でかっこいい女性スタイリストさんでした。(http://www.tumblr.com/tagged/catherine-baba ) 根幹は重苦しい感情ではありますが、ホラーのような恐ろしい映画ではないので 人間・芸術・女・性 といったこと考えるたいと思えれば ぜひ観てもらいたい映画です。
東京は明日、というか28日土曜日 今日まで!
地方でも公開は続きますし、DVDでも十分に楽しめる映画です。
DVD欲しいなぁ。もう一回ちゃんと観たい。イオネスコの写真も観たい。

そんな今週のピックアップでした。

Posted by Junko


映画「ヴィオレッタ」 http://violetta-movie.com